IMAGINE Digital Japan 2020 で紹介された事例のハイライト (1)
どのようなITツールを導入する際にも、一番聞いて頼りになるのは、すでにツールを導入した人の生の声です。10/19, 10/20にAutomation Anywhere社主催で開催されたバーチャルイベント『IMAGINE Digital Japan 2020』でも、日本の顧客が登壇して生の声を聴くことができるセッションが多数あったので、主要なものをまとめてみました。
目次
- IMAGINE Digital Japan 2020とは
- 日本の顧客事例のハイライト
- フジテック~情シス3.0~情シスをRPAでアップデートしよう!!
- NISSHA~DXへのチャレンジ-New Normalへの取り組みとRPAが果たした重要な成功要件-
- 横河電機~推進するDXアプローチとRPA活用の取組-成果を生み出すRPAのグローバル展開-
- 第一生命~RPA×AI×人による生産性向上・働き方改革-Challenge to Change with Robots-
- ウシオ電機~RPAの全社展開と内製化の推進手法
- サッポロビール~物流部門におけるAI-OCR及びRPAを活用したBPR展開
- コニカミノルタ~事例から見えてきたRPA真の価値
- 宝印刷~繁忙期の決算書類作成支援に対応する切り札としてのRPA
参考: その他のAutomation Anywhere 事例
IMAGINE Digital Japan 2020とは
「IMAGINE」は元々Automation Anywhere社が年に一度行っていた自社イベントの名前でしたが、今年は新型コロナ禍の中、デジタルイベントとして開催されました。一日目はInnovation Dayと呼ばれており、10/7にアメリカで行われたイベントの日本語版の内容がカバーされていたり、日本オリジナルのコンテンツが入っていたりしています。一日目も二日目も日本の顧客事例がありました。
合計で13社の事例です。この記事では8社を紹介します。後の5社は2本目の記事で紹介します。
日本の顧客事例のハイライト
フジテック~情シス3.0~情シスをRPAでアップデートしよう!!
imagine.automationanywhere.com
- RPAは中期経営計画にも入っており、社長からトップダウン。
- RPAは各自理解が違う。人間と伴走するアシスタント。
- きちんとBPRをやってから?野良ロボットを発生させないように。でも、Excel業務はすぐに適用できる。Excelのコピペ業務が40 --> 4分、60 --> 2分、15 --> 3分にすることができた。生産性が数十倍にもなるのはRPAが初めてだった。適用業務の種類、パターンは、検索、データ抽出、取り込み、加工、印刷、という流れが多かった。
- エレベータの状況を監督官庁に報告するシステムはAPIもなくUIで入れるしかない。このようなものにRPAは非常に有効。
- Automation Anywhereは①ユーザー主体で開発できる (これが決めて)、②情シスで集中管理ができる、③将来性安全性に期待ができる、ので選定した。
- メリットは①単純ミス削減 (担当も作業ストレスから解放)、②ルーチンワークのロボット代行による業務改善、③24時間365日の稼働が可能。
- ちょこっとした作業を週次、月次でやっていた作業の自動化。ロボットだと週次が毎日できるようになった。
- RPAチームは11名。専任ではなく情シスをコアにして各部門で兼務。
- 32ロボット、88%がユーザー開発。2019年12月から開始、4,224時間/年削減効果。AWS上に環境構築。オンライン研修延べ30回開催。社内コミュニティ、チャット (Slack, A-People, 社内ポータル)
- KPI管理 (受講率、開発申請数、運用効果)、競い合う。
- RPAはDigitaization --> Digitalizationの橋渡し役
- エンジニア募集中
NISSHA~DXへのチャレンジ-New Normalへの取り組みとRPAが果たした重要な成功要件-
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- ユーザーによる自主開発、RPAの可能性とリスクを管理
- 不正を回避するための禁則事項明確化、本番環境移送前のIT部門による内部監査
- 開発者の異動・退職リスク回避 - 開発要領書、引継ぎ進捗、IT部門によるバックアップ
- 開発のしやすさ、リスク管理のためのツールの充実度を見てAutomation Anywhereを選択。
- 2017年12月から選定開始、2019年4月に本格導入開始
- 年間2万時間の効率化を実現
- RPA普及の促進施策
- RPA教育受講者数120名。トレーナー資格を取り教育の内製化。
- ユーザーが自主的に応募 (RPA推進員)
- チャンピオンの設定 (RPA推進リーダー)
- RPAポータルによる事例集公開
- RPA成果発表会開催
- RPA導入の副次的効果
- 全社への効率化、自動化の動きの波及、加速
- 業務見直しと標準化が促進
- 今まであきらめていた業務への挑戦
- テレワークへのスムーズな移行
- RPA+チャットボット、ワークフロー等を組み合わせた業務の完全自動化
横河電機~推進するDXアプローチとRPA活用の取組-成果を生み出すRPAのグローバル展開-
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- 2017年前半からトライアル (2業務)、2017年後半からスモールスタート、2018年から国内展開、2018年後半からグローバル展開 (160以上の間接業務、月次6000時間)。
- ロボットは社内で名簿を作っている。110名のロボットがいる。ロボット専用の権限設定。
- 本格運用に合わせて内製化。
- RPA導入における試練 --> ステークホルダーの勘違いから発生。丁寧に紐解く。
- 財務諸表に現れない --> 複数社員の一部の単純作業の自動化から始めて大きな業務の自動化、最適化に進む
- 手軽に導入できない? --> 始めるだけなら簡単だが、効果を出すにはそれなりの投資が必要。
- RPAは万能か? --> 期待が大きすぎる。RPAは手だけ。判断が必要ならAI、紙業務のデジタル化にはOCRが必要。
- など
- RPAには相応の人とコストがかかる。経営課題。現場主導だけでは実現できない。BPRと連携する。
- 導入時の体制。専任組織が必要 (グローバルPMO、ROC: Robotic Operation Center)。監査部門のまきこみも早めに。ソリューション形態、開発リソース調達方法、統制のしかたを決める必要がある。企業として効果を出したいならサーバー型一択。ROCはインドに置く。
- 内製化はいばらの道 (数カ月かかる)が、メリットも多い。コストは1/3-1/5、ナレッジの蓄積、内製だといわれたものを作るからなぜ作るのかを考えるようになる。社内人材の転用機会がある。
- 海外展開も中央集権型、完全分散型、両者の中間 (連合型)がある。
- 業務選定基準の作成。複雑な分岐は外に出すことも必要。
- 定量的効果 (作業工数の削減等) と定性的効果 (顧客満足度、ミスの削減等) がある。
- KPI評価の自動化、BIツールで可視化。
- ルール、ポリシーの作成。管理体制を早めに構築してルールを作成、周知。IT統制、リスク管理。かならずしも基幹システムと同等の統制でなくてもよい。
- 現在はクラウド上の仮想環境に移行中。癖がある。
- プロセスマイニングも始めている。客観的データで可視化して業務の非効率個所を発見。
第一生命~RPA×AI×人による生産性向上・働き方改革-Challenge to Change with Robots-
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- 2016年夏から調査、2017年からトライアル導入。2018年から全社展開。2022年を目指して目標設定。
- デジタル手続きは当初300万件の紙業務を85%デジタル化を目指す。
- RPA化業務数は2000業務、2年後に3000を目指す。年間40-45万時間の削減。
- 5年間で最終的に2000名程度の生産性を高める。
- ロボティクス管理部門 (事務企画部)、各部門 (RPAアンバサダー、RPA化案件選定MT) RPAを作っていく人を育成するのも大きな課題。内製化が重要。ひとつひとつは細かい業務も多いため。
- 60名くらいの体制。ユーザー部門がどう感じたかがとても重要。
- お客様に通知をする業務にもRPAを使っている。
- RPAxAIx人で業務が広がる。
- 紙の処理をデジタルにする (AI-OCR) - AIが間違うところをダブルチェックで精度を保つ、60%くらいをAIでカバーできるようになった
- 顧客とのコミュニケーションをRPAで行う (デジタルサービス) - チャットボットがホストコンピュータ上の契約情報を参照する必要があり、参照するのにRPAを使う
- お客様に出す前に社内でチャットボットをPoCした。
ウシオ電機~RPAの全社展開と内製化の推進手法
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- RPA導入の経緯 - 業務の属人化 --> 見える化、労働力不足
- 2017年秋からヒアリング、2018年4月からRPA推進課の発足、2019年から本格開発。
- 定量効果: 対象は350業務 (AI-OCR適用業務増加中)、削減時間 12000時間/年、ボット一回実行の削減時間 10分程度から8時間まで様々、実効タイミングは毎日、特に午前中。Bot正常終了率は94%。
- RPA導入はRPAの導入が目的ではなく、業務プロセスの見える化、業務の見直しによる品質向上、高付加価値業務へのシフト。目的の共有と協力体制の構築。啓蒙活動。
- RPAツール選定は、全社での管理機能が充実している、開発生産性が高い、ことからAutomation Anywhereを選定。
- RPAポータルサイトを活用。社内Q&Aサイト。
- ハンズオン教育カリキュラム (自習)、認定制度、サンプルコード
- 共通部品はMetaBotとして作成して提供。
- 全社統一の記入フォームで対象業務のリストアップ
- 全社展開における役割分担 - 業務改善の企画・推進(IT/業務部門)、ロボットの開発(IT/業務部門)、開発への教育・サポート(IT部門)、ロボット運用(業務部門)、インフラ/ライセンス運用(IT部門)
- Process InVisionにより作業内容をキャプチャ
- RPA展開のポイント
- 他部署の導入事例と効果を紹介して競争心をあおる
- 早期にRPA化して効果を実感してもらう
- 横展開可能な他部署のボットを共有する
- さらなる展開には業務のキーマンに中心となって主体的に動いてもらう
- キーマンを一人ぼっちにせず、RPA推進メンバーが積極的にサポートする
- RPA導入を事業部の大きなテーマとして具体的に位置づける
- RPAの社内事例、定量/定性効果をアピールする
- ボットの正常終了率を高める
サッポロビール~物流部門におけるAI-OCR及びRPAを活用したBPR展開
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- 全国の拠点で異なっていた業務フローを標準化して、その一部をAI-OCRとRPAで自動化した
- 納品後に持ち帰る受領証を酒税の申請に使うため、不備なく回収できているか出荷データと照合する業務。受領書照合作業は全国であわせると年間9600時間、5.7人工。受領証原本は7年間の保存義務がある。これを4100時間に削減。受領証整理とファイリングはあまり工数が減らない。
- 該当伝票を探すのに20分くらいかかることもあったが、パソコン上での検索ですぐに見つかるようになった。
- AI-OCRの費用は読み込み項目数に比例するので伝票ナンバーと出荷日に限定。CSVに落としてExcelの照合判定表上で判定。読み取り精度を調整して99%の精度を実現(最低でも95%以上)。
- 毎営業日、夕方に実務担当者が受領証をスキャン、深夜にRPAを起動してAI-OCRで受領証画像を読み取り、CSV化、出荷システムからデータをダウンロード、照合判定表を作成して完了メールを出す。通常は9:00までに完了できる。
- エラーケースはきちんとロジックを入れておく。数カ月かけて対応。
- RPAプロジェクト全体では、32のロボット、18681時間 (11.07人工)の削減。開発中は11、開発計画中は70、合計で43723時間、26人工の削減が期待される。
コニカミノルタ~事例から見えてきたRPA真の価値
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- 3年目
- 年間5万時間の削減効果
- RPA教育受講者600人以上
- ロボット数380 (イエヤス君)
- コロナ禍での物流の課題 - モノが入ってこないことによる突発業務 2880時間/年相当。これを420時間/年に短縮。10日ほどでロボットを開発でき、85%のチェックが自動化できた。BCPにRPAはよく効く。決算までに効果を出したかったので15%は自動化しなかった。
- ROI以外の効果 - 自然災害リスク、オペレーションリスク、不正・内部統制リスク、人事・労務リスク、労働安全衛生リスクなどに効く
- RPAはDX実現 (Digitalization)の足掛かり
- RPAは人と協業することでさらに付加価値を出せるとよい。
宝印刷~繁忙期の決算書類作成支援に対応する切り札としてのRPA
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- 制作部で5-6月に集中する有価証券報告書・招集通知などの法定開示書類の作成支援。繁忙期をどう乗り切るかの工夫が必要。新たな工夫のひとつとしてRPAを活用。
- RPAツールは3社の比較でAutomation Anywhereを採用。Web工程管理システムの各ボタンをきちんとクリックできた。有価証券報告書を日立ソリューションズと作っていたこともあり。
- Creator/Runner 3台、もう一台追加予定。v11.3。
- 2019年4-6月は5業務、756時間削減。2020年4-6月は17業務で1340時間削減。
- 導入で苦労した点
- RPAとはなんぞやというのを役員に説明すること
- 5人全員兼業で制作部RPAチーム、固定メンバーで新たな発想が出にくかった。
- 開示前の情報が漏洩しないよう社内セキュリティポリシーとの整合性。RPAは画面をつなげていないと正常に動かない。しかし、画面を触れないようにする必要がある。USBポートを無効化することでマウスとキーボードが動かないようにすることで解決。
- 工夫した点
- Log To Fileを多用して動きを確認
- Error Handlingも多用
- Copy filesなどが終わったかの確認をきちんとした
- PDF書き出し終了の判定 - ファイルがロックされることを利用してRename Filesで判定。
- RPAを導入する過程で感じたこと - ロボットはすごい(3日間を30時間無言でやってくれた)、人はすごい(目視でしかできないこともまだある)、人がアイディアを出し合った成果はすごい、BPRとRPA、百聞は一見に如かず
>> IMAGINE Digital Japan 2020 で紹介された事例のハイライト (2)に続く